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バングラデシュに行くの巻 7月23日

5時半起床。
僕らは素敵な家の前で記念写真を撮りすぐさまダッカに向かった。

朝早く出るといいことは道が混んでいないことだ。
日中なら道路の路肩に「リキシャー」という自転車で引っ張る簡易タクシーみたいなヤツがたくさん走ってるんだけど、早朝はあんまりいないのでスイスイと車は進んだ。

バングラデシュの交通事情はムチャクチャだ。まあこれはインドだってタイだってそうなんだけど、車の運転がみんな荒いなんてモンじゃない。1車線しか無いのに、向こうから対向車が来てても、クラクションを「ブビー!」と鳴らしながら追い越しにかかる。抜かされる方も対向車もギリギリぶつからないように寸前でスピードを落とす。もしくは、対向車が路肩にはみだして、道をゆずるみたいな形にもなる。路肩にリキシャーがいるとこの技が使えないので道が混むことになる。
道路を走っている人たちは、対向車と路肩を走るリキシャー、そしてクラクションの音を聞きながら運転しなけりゃいけない。みんなが一つの生き物のように「シンクロ運転」とでも呼ぶような動きをアナログにやっている感じだ。
道中何度も何度も、こりゃあぶつかるんじゃないか!?ってタイミングがあったりするんだけど、寸前でぶつからないのだ。その度ぼくたちは「あぶねー」と笑っていた。

運転手さんは、南アメリカ(ボクはサウスアフリカと聞いた気がする)のブラジル、コロンビア、ペルーなどをドライバーとして何年も働いている人だそうだ。日本にもドライバーとして来たいと言っていたが、ちょっとこの運転では日本は走れないネ。。。

3、4時間運転したところで朝食ということになった。
高速道路(?)沿いのレストランでまたもやカレーを食べる。チキン。ナベ君はバーガーを食べようかと言ったが、ナヒードが「美味しくありません」と注文してくれない。本当に美味しくないのか、それともナヒードが厳格なため食べさせないようにしているのかは、食べてないので分からない。もしナヒードが母親だったら、アレダメコレダメでやだなーと思った。
ボクは子どもには甘やかすわけではないけど、興味が持ったものはちゃんと経験させてあげようと思った。もしアタロウが例え「大事マンブラザーズバンド」のアルバムを買おうとしたとしても、先回りして面白くないよ、なんて言ってやらせてあげないのは良くないな、と思ったのであった。
なんでも経験だ、と思う。

ナヒードはコーラを買うのも嫌がっている感じだったが、まあコーラ、セブンアップは注文させてくれた。これはアジア旅行する人は知っといた方がいいと思うのだが、毎日カレーなどで胃の調子が良くない、なんとなく気持ちが悪い、となった時には、炭酸のジュースを飲むとかなりすっきりする。何も食べたくない、となっても炭酸だけはスッとお腹に入る。体が欲しているんですね。

朝食を済ませて、ダッカまであと2、3時間。
車の中から日本に電話する。今回ドコモは繋がらなかったが、ソフトバンクは簡単に繋がった。
妻タムエに電話して、長距離移動には閉口していたが、そんなことはナヒードが聞き耳を立てているので言えず、昨日の夜はホタルも星空も素敵なところに来て、いいよ!と伝えて、阿太郎もボクのベッドに入って「パパ、パパ」と呼んでいる、と聞いて恋しくなった。

電話を切ってしばらく走っていると、信じられないことが起こった。
僕たちの走っている車の前を横切って、自転車の後ろに人が乗れる荷台に、赤ちゃんを抱っこした
家族が乗っている車が飛び出してきたのだ。一回、減速したように見えたが、猫のように飛び出してきやがった。で、「あれ、これはさすがにぶつかるんじゃないか?」ってタイミングで、急ブレーキをかけたが、やはり間に合わず、僕たちのNISSANキャラバンは、子どもずれの車にヨコから激突した。。。

ぶつかってしまった瞬間、ボクは荷台に赤ちゃんが載っていたのがショックでショックで、見ていられなかった。すぐにたくさんの人が集まって来て、赤ちゃんの父親が赤ちゃんを抱いて「ダダーダダー!」と悲鳴のような声をあげていて、その悲痛な声を聞いてボクは申し訳なくって泣いてしまった。赤ちゃんは頭から血を流している。目は開けているけれど泣いていない。心配だ。
余りボクは見られなかったが、ナベ君にあとで聞くと運転手もぶっ倒れて目を開けていなかったらしい。
 しかしナヒードはその集まって来た人だかりになにやら早口でまくしたてている。そして代表者と思われるべき人を車に載せて、ちょっと離れた場所に移動して、ハナシをつけたのかそいつをその離れた場所に置き去りにして車をまたダッカに向けて走らせてしまったのだ。

ぶつかった時には、今日は大変なことになったな、ナヒードの会議も今日はできないか、大幅に遅れることになるだろう、と思っていたのに、ぶつかった相手がどうなってるかも分からないのに、車を走らせてしまう神経にボクはますますやられてしまった。これはひき逃げと言うんじゃないか?と思った。
ナヒードは「私はダッカ大学の教授よ」と彼らに言ったらしい。それしか言ってないのだ。
そして「彼らみたいな人たちは、石を投げて来たりとかします。わたしスゴくコワかった〜」などと言っているので、ボクはアタマきて、子どもひいといて逃げ出したりすれば、オレだって石を投げる、分かるよ、と言った。

ボクが一番違和感を持ったし、アタマきたのは、ナヒードが「ダッカ大学の教授よと言いました!」という言葉だった。大学の教授だからなんだってんだ?人轢いたら謝れ、相手は子どももいるんだぞ、と。それを相手はレベルの低い庶民だから「石を投げてくる蛮民」扱いしやがって、赤ちゃんは血を流しているってのに、「コワかった〜」じゃねえよと。
上流階級の信じられない特権意識がむかついてむかついてしょうがなかった。ボクは謝罪に行きたかった。というか行かなくちゃいけないだろう、普通。

一応文化の違いってヤツもあるので書いておかなければイケナイ。
昔、本で読んだのだが、インドの話。カーストで身分が低いタクシーの運転手が誤って、身分の高い子どもをはねて死なせてしまったのだが、その時運転手は集まって来た群衆に撲殺にあってしまったという。その後、インドの議会で、人をはねてしまった場合、このように撲殺されてしまう危険すらあるので、ひとまず「逃げていい」という法律を作ったのだそうだ。

そんな法律もあるくらいなので、ここはバングラデシュ。もとはインドということで外国から来た僕たちがヒステリックに「人権侵害だ」とかやるのは、押し付けがましくてめんどくさい正義感にあふれたアメリカンみたいなので、良くないのかも知れない。しかし、しかし、これでいいのか?インドの神はここで「これでいいのだ」というのかも知れない。

すっかり疲れたボクたちは、ダッカに到着。ナヒードは会議に向かった。
今年の4月からナヒードは、美術学部の学部長になったそうで、ナヒードが到着次第会議が始まったらしい。
僕たちは両替を済ませて、ホテルに戻り待機していた。で、荷物を整理していると、、無い。
無い。
DSが無い。
バングラデシュに来る直前ヤマダ電気で買って来た、ニンテンドーDSと入っていたドラクエ9が無い。
やられた。どこでだ?ていうかほとんどカバンからも出してないヤツ。気づくはずも無い。二日前のホテルでは間違いなく見たから昨夜の、あのいい家でとられたクサい。しかしお手伝いのばあさんとかが、DSだけを盗むはずが無い。欲しいはずも無い。子どもクサいな。でも疑うべき人物がいないな。
 着いてすぐカバンは二階にあげてしまったし、昨夜の夜は、みんなでマーケットに行ったはず。14歳の子どもも行っていた。、、、思い出すと甥っ子の方は来てなかった気がする。
あ、、たぶんあの子どもだな。欲しくなっちまったんだろうな。朝、出発前にみんなで写真を撮った時もいなかったな。。。罪悪感かな。まあ、子どもの時はそういうことやってしまったりするもんだよ。しょうがない。


ナヒードの会議も終わり、また合流してその話をすると、あまり返事をしなかった。
それより、オヤジが今日の予定はどうなってるのか聞いた。
そして、明日の予定は?と聞くと、
「予定は決まってません。わたしは今エラくなって、忙しいです。6月にくれば夏休みですが、今は学校もあるので、ダッカからそんなに離れられません」
と怒り始め、
「そんなに言うんなら今すぐ明日からどこ行くか決めてください!今すぐ!」
とオヤジのことを怒り始めたので、ボクは、オヤジに散々お世話になっておいて、予定も決めず何百キロも車で移動するだけで、すぐまた帰って来たりと、理不尽なプランに我慢ならないだけでなく、しかも「忙しいから、ごたごた言うんじゃねえ」的な態度にムカついてしまい、また忙しいって言えば来ねえよ、この野郎とむかついてしまい、意地でもナヒードと離れて、楽しい旅行にしてやると思い、ガイドブックを見ながら、南にある「ハティヤ島」というトコロに行くとナヒードに言った。すると南は「サイクロンが来ている」「船が出ていない」と始まったので、ガイドブックに毎日ダッカからハティヤ島への直行便があると書いてあるので、それをナヒードに伝えると、
日本語で
「あきさん(ボクはこう呼ばれてました)は、私より全然バングラデシュに詳しいですから、どうぞ南にでも行ってください、そしてバングラデシュを存分に味わってください!」
と嫌みたっぷりに言った。嫌みの言い方は一級品だ。スゴい語学力だ。むかついて
「なるほど、僕たちだけで行ったら、散々な目に遭うから、どうぞ味わってくれと、そう言いたいわけだ」
というと、
「プリーーーズ!!!」
と言うので、
「性格悪いね」
とだけ言ってあげて、あとはアタマきたから一言もしゃべらなかった。

で、最初船は往復16時間だと言っていたのに、往復32時間にのびてしまい、なんだかんだ「どうぞ苦しんでください」みたいなことを連発するので、オヤジも不安になって、南の島に行くハナシは中止にした。ただ、ボクは別にガイドなんていなくたって、何とかなるよ、この傲慢なばあさんと一緒にいるより数倍ましだ、と思っていたのだが。

大体、このナヒードは、都合が悪くなると、無視するか、嘘をつく。
ナヒードは上流階級(!)なのでまず汚いところに行くのがいやなのだ。南は貧乏な人たちがたくさん住んでいるようで、それだからまずナヒードは行きたくないのだ。それならそうと言ってくれればいいんだが、その時、南はシーズンが終わってるとか、台風だとかなんだとか嘘をつくのね。
後日ナヒード抜きで、オールドダッカという、ムガル帝国の時代の城や町並みを見に行くことになるのだが、最高に刺激的で面白かったのだけれど、そこも最初はなんだかんだ理由を付けていかせてくれなかったのだ。


ボクは不誠実な対応にもうむかむかしていられなかった。こんな国二度と来るか。
人をひいといて、当たり前な顔していやがりながらインテリ気取りやがって、国を憂えている、なんていいながら、自分がその当事者になっているって事にきずかねえのか?
汚いところから逃げて距離をとってれば、自分の優位が確保されるってのか?
ボクはありのままのバングラデシュが見たい。隠したからあんたがなんか得するのか?

旅行中読んでいたゲーテの本にこうあった。
「私はよく知っている。われわれは平等ではない、また、ありえもしない。しかし思うのだが、威厳を保たんがためにいわゆる賤民から遠ざかる必要があると信じている人間は、敗北をおそれて敵から身をかくす卑怯者と、同じ非難に値する。」
激しく同意。


その後、ボクの無くなってしまったDSのことで、ナヒードは「ひっぱりだこ」だったはずの運転手が犯人だと決めつけて、(ここでも薄々ナヒードは教授の息子が多分とってしまったと気づいていたはずなんだが上流階級にいる身分から犯人を出したく無いという心理が多分に働いていた気がする)、その運転手を詰問していた。ボクはその人は盗むタイミングも全くなかったし、もし盗むとしても、DSなんかとらずに金とるだろうし、自分が疑われそうなのにむざむざ盗むようなおばかにも見えなかったので、ナヒードに「ちょっとその人は疑ってないよ」と言ってくれと頼んだのにまたもや無視されて、その運転手はジブンのバックの中身をライトで照らしながらジブンの潔白を主張した。ボクはそんな事しないでくれよと思い「アイ・ビリーブ・ユー」と言った。が、しこりが消えるはずも無い。あっちからすれば何時間も運転した挙げ句、疑われて最悪だ。
挙げ句の果てには、ナヒードはこの運転手のことを、人身ブローカーみたいな事をやっていて、日本にバングラ人を不法に入国させようとして2ヶ月ほど刑務所に入っていた極悪人みたいな太鼓判までつけた(多分コレも嘘だと思われる。あくまで犯罪を犯すのは身分が下のヤツだと言いたげだ。)

ボクは上流にいながら、上流にいるだけで武士じゃない、こいつらの考え方がムカついて、
この国を支配した昔のイギリス人は
「嘘ばっかりついて不誠実だし、こいつら上流にいるけど、下のヤツだってこいつらに支配されるなら、俺たちに(キリスト様に)支配された方がマシじゃね?」
との思いがあったんじゃないか?と思い、前回来た時は、イギリス人(東インド会社)の悪行三昧を考えてそちらにムカついてたが、今回は「いじめられる方にも原因がある」という認識に至ってしまった。
以前3チャンネルの「世界史」という番組で奴隷制についてやっていたが、アフリカに欧米列強が進出して、植民地化して、奴隷を連れて帰っていったが、それをする欧米側の自己弁護はこんなものだった。
なんと、アフリカ大陸で奴隷を買ったのはもちろん白人なんだが、その奴隷を捕獲して来たのは他でもないその土地土地の黒人の豪族有力者だったという。
白人達は、ジブンの仲間を売るような劣等な種で人間(ヒューマン)じゃないから、こいつらは支配していいでしょ、という身勝手な考えに至ったようだが、生まれて初めてその気持ちがわかってしまった。

おまえら、下を差別しているようだが、俺たち外国人から見れば、同じだからね、一枚岩だからね、と言いたい。ジブンの仲間を見下せば、同じ民族なんだから、ジブンに返ってくるという、極当たり前の事をまるで気づかないようである。

とにもかくにも今日は最悪だ。
子どもを車ではねるし、DSはとられる、ナヒードには嫌みを言われて、差別しまくりだ。
ボクはアタマに来てアタマに来て、ホテルに帰りナベ君とブルーハーツの「青空」をギターを弾きながら歌った。

  生まれたところや皮膚や目の色で一体このボクの何が分かるというのだろう?
  運転手さんそのバスにボクも乗っけてくれないか?行き先ならどこでもいい。
  こんなはずじゃなかっただろ?歴史がボクを問いつめる。まぶしいほど青い空の真下で。

ああ、やさしいから好きなんだ。僕、パンクロックが好きだ。


追記
ナヒードは後になって「私は予定を決めてました。」とオヤジとナベ君に言ったそうな。また嘘をついている。「予定は無い」「文句あるんならジブンで決めろ」と言ったから島に行くと言ったのに。僕はナヒードに「ユーアー・ア・ライアー」と言いたくてしょうがなかった。
オヤジは「寝不足だからイライラしているんだ」と僕を諭した。

by unkeeen | 2009-08-04 14:10